【島キュイジーヌ その1】
【島キュイジーヌ その1】
引き出す料理という思想。
料理は、足すことで豊かになる——
そう教わることも多い世界です。
ソースを重ね、
技法を重ね、
驚きを重ねる。
けれど、生産者の方々から届く沖縄の素材と向き合うたびに思うのです。
本当に必要なのは、
足すことなのだろうか、と。
在来種今帰仁アグーは、
すでに深く甘く、静かに澄んでいる。
島野菜は、
土と海風を吸い込み、奥行きを宿している。
島唐辛子は、
鋭さの奥に、香りという余白を持っている。
素材は、もう語っている。
私の役割は、
それを“上書きすること”ではなく、
輪郭を整えること。
的確な火入れ。
塩を効かせすぎない。
香りを奪わない。
削ぎ落とす勇気と余白を残す覚悟。
そこに立ち上がるのは、
派手さではなく、滋味。
口に含んだ瞬間よりも、
飲み込んだあとに広がる余韻。
それが、
私の目指す“引き出す料理”。
沖縄の素材は強い。
だからこそ、料理は静かでいい。
一皿ごとに、少しずつ。